2007年02月19日

Web2.0=西海岸 vs Web1.0=東海岸 ?

シリコンバレー出張に来て、標題のことに気づきました。
こちらの人々にとっては当然かもしれません。

ヨーロッパのCERNで生まれたWeb0.1 を、MIT関係者(背後には米国政府がいます)、慶応大学が素早く気づいて、元のCERNに加えてMIT、Keioにもってきて、Webの標準をW3C中心に構築してきたのは偉大な作業でした。

1998年のXMLの誕生がその頂点だったのかもしれません。
そのインパクトたるや、地球に大隕石が衝突したようなもので、あの辛口のがートナーGが、「向こう1000年はもつ規格」と太鼓判を押したほどです。

しかし、昨今では、Webの父、Sir Tim Berners Lee と同じファーストネームをもつTim O'Reilly氏の方が有名です。2005年の暮れには、Tim Berners Lee も、"Web3.0 - Bi-directional Web"というW3C Advisory Committeeメンバー向け講演で、Web2.0を意識し、一定の敬意を払いました。しかし、その後、実態がない!と攻撃する側に回っています。

そして、ここシリコンバレー中心に、「もうW3Cなんて要らないのでは?」という発言が出始めています。これは、標記のように、Webプラットフォームを進化させ、もり立てる主導権を東海岸エスタブリッシュメントから奪ってしまおう、という動きなのかもしれない。これがWeb2.0の正体なのかもしれない。

MIT, Harvard, GIT他、東海岸には天才を輩出した凄い大学があり、ドイツでも、IT分野でMITの博士号をもてばドイツのどこの大学からも30歳台で教授職のオファーが来る、とさえ言われています。しかし、昨日キャンパスに行ってみましたが、UC Berkelyも、Stanford も超超一流の大学です。技術創造を促進するコミュニティ、人脈の広さ、深さも凄まじいものがあります。

W3Cが骨抜きになりかねない動き、ととらえたとき、大文字Semantic Webと、小文字semantic webのどちらが勝つか(高者からみれば前者は後者の特殊形だから、どちらであっても自分は勝ちとなるところがアンフェアです!)など、要注目の論争、技術開発競争があります。

さて、シリコンバレー派に宗旨替えしたけれど、W3Cには深くコミットしている者としてどうしたら良いか。真剣に考え始めたところです。

(C)(C)メタデータ株式会社  文責:野村直之
posted by Web2.0 at 16:57| Comment(18) | TrackBack(16) | 日記

2007年02月17日

ブログらしいブログって何だろう。。

Web2.0の観点では、時系列の構造がサーバに入り、メンテしやすく、
何よりも思い立ったらすぐ書ける、つまりコンテンツを人間の脳、
感性から引き出しやすくする仕組み、でしょうか。

※今こうして、この場ならではのコンテクスト(文脈、背景)を
 頼りに短時間で書き始められているのもその1つの証拠。
 ある段階で、手作業、もしくはツールで、staticな頁に
 移しちゃっても全然オッケーなはずですね。この意味では。

一歩進んで、企業で使うブログは、社員の本音を上司がとことん
引き出すため、、みたいな社内利用の側面が語られたり、
ECで商品のオンラインカタログを毎日更新するのに便利、
という即物的なご利益が語られたりします。

それを超えて、CRMで顧客と心の交流ができるレベルまで
コンタクトの親密さを増すツールとして、山崎秀夫さんは
SNSのメリットを語り、事例を紹介しておられます。

では、一方から発信するだけのブログではどうなんでしょうか。
1つの答えが見つかりました。ANA Hotelsの沖縄ブログです:
http://concierge.anahotels.com/okinawa/page/cat57/index.html

沖縄の魅力を宣伝しているのには違いないのですが、
短いメッセージながら、あくまで個人の視点で、
読み手を「主観的な」態度に引き込むのに成功していると思います。
「うちなんちゅう」の自分と沖縄の関係って何だろう、と
深く内省始める人も出てきそうです。

Mixi日記には以下のようにコメントしてみました。
---------------
2006年01月29日 18:19 nomuran

http://laguna.okinawa-joho.net/blog/index.html より:

2006年01月20日 桜が咲きました!
全国的には例年より雪も多く寒い日が続いているなか、沖縄ではもう桜の季節となりました。
リュウキュウ緋寒桜は、ソメイヨシノやヤマザクラに比べて濃いピンクの花をつけ、亜熱帯の雰囲気を漂わせる桜です。
ラグナ正面玄関前にも桜が活けられており、ロビーはすっかり春の色に染まっています。
今年の今帰仁城跡桜花見は1/15から、八重岳桜まつりは1/21から始まります。沖縄で一足早い春を感じてみませんか?

2006年01月29日18:24 nomuran
上の「ラグナ」ブログですが、ずばり劇場空間の様子をネットに発信している、といえますね。

実際に、自腹でこれから宿泊に行こう、という者にとって、自分がこの舞台の一部となり、ひょっとしたらブログに登場(写真、テキスト、音声・・)するかもしれない、という感覚は、従来のホテルに無かったものだと思います。

西洋近代ホテルは、プライバシーを守り抜き、ひっそりとお忍びで訪れる客を隠す存在。もちろん、プライバシーは十分守られることとは思います。しかし、従来にないオープンさを新たに兼ね備えることで、ホテル宿泊というサービス商品の属性が一部根本的に変貌する、ともいえそうです。

徹底した顧客参加、サービス商品の共同創造というアプローチは、Web2.0上のサービス商品の多くに共通する特性、といえそうです。
------------

通常のWeb pagesは、何らかの「結論」を書いている。
それに対して、ブログに書かれた内容は、「永遠のβ版」
On goingのコンテンツ、という了解があるのかもしれません。


(C)メタデータ株式会社 文責:野村直之
posted by Web2.0 at 17:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2007年02月16日

O'Reilly booksの"Podcasting Hacks"

O'Reilly booksの"Podcasting Hacks" :

http://www.amazon.com/gp/product/0596100663/ref=sr_11_1/104-6444656-8127924?%5Fencoding=UTF8

の序文に、著者のJ.D. Herringtonが良い文章書いています。
T.B. Leeと違って、極めて具体的でわかりやすい、
双方向Webの小論になっている。。


これに触発されて、独自に、次の骨子を思いつきました。(他に、同じ発想した人は何人もいるとは思いますが)

3/3 の拙講演や、日経IT Proの連載に取り上げたいと思います。


・Bidirectional Web とは、技術的にClient / Serverの区別が無くなってきた(雌雄同体?)、といものでは【ない】。

・ブログに象徴される、情報発信のあらゆる障壁(中でも心理的障壁、時間コストの壁が大きかった)を押し下げ、情報発信の大衆化がはかられた総合インフラこそが、Bidirectional Web。

・Podcastingは、その中でも、音楽(スピーチ、会議)の録音・制作の大衆化を先導する役目を担う。専門家とアマチュアの演奏、パフォーマンスには厳然たる差はあるが、本数的には、自分の家族が歌った演奏をWebで親戚・友人に聴かせたい、というニーズの方が間違いなく多いはず。

・この場合、コンテンツ自体(データ本体)には対価はつかないが、そのハンドリング、メタデータは、十分に有料のビジネスモデルとなり得る。

・時系列の概念があってこそはじめて、「タイムシフト」の概念も成立する。線形の放送メディアの時系列をWebにマッピングし、それを柔軟化する(タイムシフトやx1.5速の視聴のメリットは明らか)だけでもWebのパワーは大。放送界にとって脅威となり得る。

・しかし、そんなのは、Web2.0の巨大なポテンシャルのほんの入り口に過ぎない。優れたアイディアによる新ビジネスモデルの可能性も広大。未だ未知ながら。

・既存ビジネスモデルは既に根本的な修正を迫られている:
  −「無料ビューワ/リーダを提供し高価な編集ソフトの販売でコスト回収」というビジネスモデルは、双方向Webの発展とともに成り立たなくなっていく
  −Dreamweaverほどの高機能Webサイト編集ソフトが3万円台まで低下価格化したあげく、(まだ)体力のあるアドビに吸収されたのは、その1つの現れかも。



加えて、OneWebという、また1つわかりにくい、T.B.Leeの言葉の翻案や、SemanticWebとWeb2.0、Web3.0 (2.1) :
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=59439886&owner_id=114101

これらの関係についてコメントすれば、以下の拙講演のネタは十分揃うことになるでしょう:

3月3日@青山(もう満席かも。。)

14:30-15:15
 「技術者の視点でWeb2.0デザインパターンを考える」
  −アーキテクチャ(スタイル)とWeb2.0
  −W3C、Tim B.Leeの見解、スタンス
        慶應義塾大学SFC研究所・上席所員 野村直之

 いわゆるO'Reillyの「論文」の副題には、「デザインパターン」という言葉が含まれています。技術者にとっていまひとつ漠としてとらえどころがないように感じられるWeb2.0ですが、アーキテクチャ設計の基本指針というメタなガイドラインや経験知を集めた「デザインパターン」の視点でとらえると活路を見いだせるという面があります。

 そこで、今回Web1.0以前からあるRESTアーキテクチャスタイルとWeb2.0の関係、W3C、Tim B.LeeによるWebの設計思想などの基礎を踏まえた上で、XMLコンソーシアムが試作したiPlatという大きなWebシステムを事例に、Web2.0的アプリケーション像を考察します。
------

上記の後半はこちらでご紹介(本当は上のアブストラクトは両方にかかるものでした):

15:15-16:00
  「Web2.0的アプリケーションを考える」
    PAGE2006クロスメディアコンファレンス報告〜iPlatを題材に〜
          XMLコンソーシアムエバンジェリスト
          PFUアクティブラボ(株) 松山憲和 様
          日立ソフトウェアエンジニアリング(株) 宮崎昭世 様
         アドソル日進(株) 荒本道隆 様  他

 "Web2.0 for Enterprise"の観点から、通常のWebServiceと、RSS/Atomベースの「軽量」WebServiceの使い分け、併用(iPlatで既に実現)について、初期の議論の成果を提示いたします。


前半も気合い入れてまいります。下記の拙作文は、T副会長にも気に入っていただけました。おかげさまで、コンピュータメーカをはじめとする大手ITベンダさんにも納得、得心いただけるものとなりました:

13:30-14:00
 「なぜXMLコンソーシアムがWeb2.0か?」
             XMLコンソーシアム副会長
            インフォテリア(株)代表取締役社長 平野洋一郎様
             XMLコンソーシアムエバンジェリスト
             メタデータ(株)代表取締役社長 野村直之

 企業情報システムとは相容れないイメージでみられがちなWeb2.0ですが、
 2つの理由で今後大きな流れになると考えます。
 第一に、10余年前の商用Web1.0の翌年にはイントラネット文書管理が出現したように、自宅で創造的な良い環境を知ったユーザは「会社では別」では済まないこと。
 第二に、Web2.0の「(社内)ユーザ参加型アーキテクチャ」、「データこそが主役」という指針により、社員から貴重な情報を引き出し(blog/SNS)、ユーザ中心に多種多様のデータと融合・連携させ(remixing)、ビジネスを活性化することが期待されます。データ、情報、知識を生かし切ることは、企業情報システムの究極のゴールではないでしょうか。
 "Web2.0 for Enterprise" をテーマに掲げ、企業情報システムのための既存の要素技術や設計思想とも組み合わせ、これからの快適な情報環境の構想と、それを実証評価する活動について説明いたします。


初出 2006.02.17 (C)メタデータ株式会社 文責:野村直之
posted by Web2.0 at 17:09| Comment(76) | TrackBack(1) | 日記